「流血の魔術 最強の演技」は、日本のプロレス界の裏側を暴露したミスター高橋(高橋昇)の著作であり、プロレスが「ガチンコ(真剣勝負)」ではなく、「ショー」であることを初めて明かした衝撃的な作品です。ミスター高橋は、新日本プロレスでレフェリーとして長年活躍し、アントニオ猪木をはじめとする数々のレスラーたちの試合を見守り、その裏側に精通していました。彼の本は、プロレスファンや関係者にとって大きな衝撃を与え、プロレス業界の真実について議論を巻き起こしました。
ローランドといえばローランド・ボックはジェネレーションギャップ
プロレスはショー?流血の演技と観客の感情
本書の中で特に印象深いのは、プロレスが観客を楽しませるための「演技」であり、流血や壮絶な戦いがパフォーマンスであるという点です。プロレスラーたちは、試合の中で「演技」として流血し、相手の攻撃を受けてはすぐに起き上がり反撃します。この「耐久力」や「スーパーヒーロー的」なパフォーマンスは、ファンに夢を見せるために計算されたものです。
一方で、ボクシングのような競技では、少しのパンチが当たるだけでノックダウンすることもよくあります。これは、ボクシングがリアルな打撃のスポーツであり、選手の安全が最優先されるため、ノックダウンがあれば試合が一時中断されることが当たり前だからです。対照的に、プロレスは打撃を受けてもすぐに立ち上がり、反撃することで「不死身のヒーロー像」を演じ続けます。これが、ボクシングや他の格闘技とは大きく異なる点です。
演技の中のリアリズム
ミスター高橋の本の中で述べられているのは、プロレスは完全なショーである一方で、レスラーたちは本当に体を張って戦っているということです。流血シーンや派手な技は、観客を魅了するための重要な要素であり、そのためにレスラーたちは鍛錬を積み、何度もリハーサルを重ねています。レスラーたちが試合で見せる痛々しいシーンや、互いを叩き合うシーンは、演技とはいえ決して「楽な仕事」ではないのです。彼らは、自分たちの肉体を酷使しながらも、ファンの期待に応えるべく限界まで挑戦し続けます。
猪木とアリ、そして猪木対ローランド・ボック
本書では、アントニオ猪木とモハメド・アリの異種格闘技戦についても触れられています。この試合は「ガチンコ」なのか「ショー」なのかをめぐって多くの議論がなされてきましたが、ミスター高橋はその舞台裏を赤裸々に語っています。また、アントニオ猪木とドイツのプロレスラー、ローランド・ボックとの試合も話題に上がります。ローランド・ボックの強靭な肉体と猪木の技術の応酬は、ファンにとって伝説的な試合ですが、その裏にも演技の巧妙さが隠れていたのです。
なぜプロレスラーはすぐに立ち上がるのか?
プロレスラーがどれだけ強烈な打撃を受けても、すぐに起き上がり反撃できるのは、試合の進行や物語性を損なわないためです。プロレスはストーリーに重きを置いており、勝者と敗者だけでなく、その過程での「ドラマ」が重要です。レスラーたちが打撃を受け、耐え抜き、最終的に勝利を収める姿は、観客にとってのカタルシスを提供します。ミスター高橋は、プロレスのこの構造を「最強の演技」として称賛し、単なる格闘技以上のエンターテイメントであることを強調しています。
「流血の魔術」から学ぶプロレスの本質
ミスター高橋の「流血の魔術 最強の演技」は、プロレスの本質を理解するうえで欠かせない一冊です。この本は、単なるスポーツファンにとっても、エンターテイメントの裏側を知る手がかりとなります。プロレスがどのようにしてファンの心をつかみ続けてきたのか、その秘密を知ることで、私たちはプロレスという競技をより深く理解し、楽しむことができるのです。
最後に、ダントツ君としても、プロレスを見ていて「なぜこんなに殴り合っているのにすぐに立ち上がって反撃できるのか?」と不思議に思っていたことがあります。しかし、ミスター高橋の本を読んでその答えがわかりました。プロレスは演技でありながらも、ファンを楽しませるための壮絶な「リアル」があるのだと。昭和最大のショーであるプロレスに観れたのは最大の幸せといえるでしょう。