「仕事って何のためにするのだろう」「人生において働くことってどんな意味があるの?」――そうした疑問を抱えながら日々を過ごしている人は多いはずです。そんなモヤモヤに対して、“ビジネスの鬼才”とも呼ばれる森岡毅さんが、子どもたちに語りかけるように綴ったのが『苦しかったときの話をしようか ビジネスマンの父が我が子のために書きためた「働くことの本質」』です。本書は、マーケターとして数々の実績を持つ森岡さんが、あえて“過去の苦しかったエピソード”を包み隠さずに公開し、「それでも前に進むにはどうすればいいか?」を優しく教えてくれます。今回は、この本の魅力をわかりやすくご紹介していきます。
・開け道/道は開ける/デール・カーネギー/おすすめ星4
著者・森岡毅さんとは?
森岡毅さんは、P&Gジャパンでブランド・マネジメントを学び、のちにUSJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)の復活劇を指揮したマーケターとして知られています。テーマパークの売上低迷を劇的に改善した手腕は「マーケティングの鬼才」と呼ばれ、現在は「刀(かたな)」という会社を立ち上げ、各地のテーマパークや企業のコンサルに取り組んでいます。本書は、そんな森岡さんが“ビジネスの成功談”ばかりでなく、“苦しかったとき”の失敗や挫折を丁寧に振り返り、そこから学んだことを子どもに伝えるために綴られた一冊。仕事の裏側や人生の転機がリアルに語られているのが大きな特徴です。
苦しかったときこそ糧になる
本書のタイトルからわかるように、“苦しかったときの話”が物語の核となっています。就職活動で挫折を経験した学生時代のエピソード、P&G時代に味わった悔しさ、USJ再建での大きなプレッシャーなど、“華やかに見える業績”の裏には多くの苦労があったことが綴られています。しかし森岡さんは、それらの経験があったからこそ自分の強みを見出し、何度でも立ち上がる力を養えたと強調。苦しい局面こそが、自分にとっての成長機会になると説いています。
マーケティング的な思考の活かし方
森岡さんはマーケターですから、物事を論理的かつ定量的に捉える視点も大切にしています。しかし本書では、数字や理屈だけでは動かせない“人の心”の重要性にも触れており、ビジネスパーソンだけでなく、これから社会に出る学生にとっても読みやすい内容です。たとえば、問題を解決するときには「論理的な仮説」を立てつつも、「相手の感情に訴えかける手段」を併せて検討する――そんなマーケティング的な発想のヒントが、森岡さんの失敗談や成功談とともに語られています。
親子で読みたい“仕事と人生”の本
本書は「子どもに伝えたい」と銘打っているだけあって、文章が平易で、誰にでもわかりやすい内容です。社会人であれば「そうそう、自分もこういう壁にぶつかったなあ」と共感できるでしょうし、中高生なら「大人がこんな苦労をしているなんて知らなかった」と目を開かれる思いをするかもしれません。親子で読んで、お互いの考え方をシェアするのも面白いはずです。
働く目的を見つける
森岡さんは「働くこと」自体を手段と捉えており、その先にある“自分の人生の目標”や“家族や仲間を幸せにしたい気持ち”こそが大切だと説いています。どんな仕事をするにしても、苦境に立たされたとき、「なぜ自分はこれをやっているのか」という軸がないと挫折しやすい。だからこそ、自分の強みを理解し、社会の中でどう貢献していくかを考えるプロセスが欠かせないと、エピソードを通じて何度も繰り返し伝えています。
おわりに
『苦しかったときの話をしようか』は、成功だけを謳うビジネス書とは一線を画し、“挫折”と“再起”を真摯に語ることで「働くことの本質」を浮き彫りにした意欲作です。華やかな経歴の裏で、森岡毅さんがどんな壁にぶつかり、どうやって乗り越えたのかを知ると、「苦しさ」自体に意味があると気づかされます。特に就活を控えた学生やキャリアに悩む社会人には、多くの学びと勇気を与えてくれるでしょう。自分の経験や苦悩を惜しみなく分かち合ってくれる森岡さんの言葉を通して、“働く”という行為の深い意義を、ぜひあらためて考えてみてください。
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